要約
筑波大学大学院教育研究科 中村 稔 |
本研究題目 正弦・余弦定理の活用に関する授業研究 −平面・球面三角法の応用を通して− 授業実施時期 |
1.はじめに 本研究では球面上の世界の数学を扱う活動を行うことで、生徒が三角法の有用性を実感し、数学的な見方・考え方のよさを認識できる否かを考察した。 |
2.研究目的・研究方法 研究目的 地球儀を用いた球面三角形の考察、および地球儀上の距離計算を行う活動を通して、数学的な見方や考え方のよさを認識するなど数学観の変容可能性を考察するため、以下を課題とする。 課題1:地球儀を用いた球面三角形の考察、球面上の距離計算を行う活動を通して、数学が具体的な事象の考察に活用できることを実感できるか。 課題2:課題1を通して、数学的な見方や考え方のよさを認識することができるか。また、数学観の変容を促すことができたか。 研究方法 球面三角法に関するテキストを作成し、授業を行う。授業中に行うワークシート、授業の事前・事後のアンケート、授業を撮影したビデオをもとに考察する。 |
3.教材観 球面三角法は、非ユークリッド幾何学、特に球面幾何学における三角法であり、高等学校で学ぶユークリッド幾何学とは違った性格をもった幾何学である。また、数学以外の分野である測地学や地理学を始め、測量一般の歴史とともに発展してきた学問分野でもある。 球面三角法に関する教材を作成するにあたって、球面上の距離計算という具体的な授業の達成目標を定めた。球面三角法を具体的な問題に応用することにより、三角法の有用性をより実感しやすくなると考えた。また、本教材は他分野、特に地理学の内容と密接に関連している。授業ではこうした他分野とのつながりから、生徒が自ら三角法の有用性を実感できるよう、作業的な活動を取り入れたり、定理の数学的な証明に深入りしないなど配慮した。 |
4. 教材の数学的解説 報告書の「教材の数学的解説」を参照。 5.授業概要 報告書、授業スライド、授業テキスト等を参照。 |
6.議論 課題1について 授業後のアンケートから、生徒は具体的に数学が使われている場面を通じて、身の回りの数学的な見方・考え方ができるものがあるという認識をもったようである。数学が具体的な事象の考察に活用できることを実感したと思われる。 課題2について 授業後のアンケートから、球面幾何の学習活動を通して、平面以外にもさまざまな空間が存在し、対象によって性質が変わること、また逆に見方を考えることで数学の対象を広げることができることを認識したようである。また、授業の内容に関連して、より発展的な内容に興味を抱く生徒もいた。新しい見方・考え方を発見し、それを応用しようとする態度がうかがえる。 以上の議論により、本授業を通して数学的な見方や考え方のよさを認識することができたと考えられる。またその結果、数学観の変容を促すことができた。 |
参考文献 ・長崎栄三編著(2001).算数・数学と社会・文化のつながり―小・中・高校の算数・数学教育の改善を目指して―.明治図書 ・穂刈四三二(1973).基礎数学講座3巻 平面球面三角法.共立出版 ・前原濶(1998).入門 有限・離散の数学5 円と球面の幾何学.朝倉書店 |